顔面神経麻痺 ¥1500~

顔面神経麻痺はWHO(世界保健機構)の鍼灸適応疾患の一つに挙げられており、鍼灸臨床においては回復が得られる疾患として認識されています。治療に関しては、急性期ではまず専門医療機関におけるステロイドなどの薬物療法で神経の炎症と腫れを引かせ、それと併せて週に1~2回の鍼灸治療をしていきます。顔面への鍼灸治療により顔面神経やその周辺組織の血流改善・壊れた組織の修復を目指し、手足への治療を合わせる事で全身の血液循環の改善、回復力・免疫力の向上を図っていきます。

顔面神経麻痺の原因

中枢性顔面神経麻痺

脳幹の脳血管障害(脳梗塞,脳出血)、または外傷によるもので、突然または急性に発現するものが多いようです。CTあるいはMRI検査を受けしっかりと診断を受けることが重要になります。顔面下半分の症状は著明ですが、顔面上部の麻痺は少なく額にシワを寄せる動作は可能です。顔面部以外の症状では眩暈、嚥下障害、片麻痺などの神経症状を伴うことがあります。

末梢性顔面神経麻痺

いくつかの原因がありますが、以下に主なものを挙げてみます。

  • ベル麻痺
    原因不明で突然おこる顔面神経麻痺です。誘因となりうるものでは感染・寒冷刺激・過労などがありますが、まだはっきりとは原因が分かっていない状況です。 顔面神経麻痺の約7割を占めていますが予後は比較的良好です。。
  • ラムゼイハント症候群
    帯状疱疹ウイルスの活性化による顔面麻痺です。表情筋麻痺に加えて、耳痛・耳鳴・難聴・めまいなどの症状を伴うことが多く、耳介や耳の周りに水泡をきたすことで診断が容易になりますが、後から水泡がでてくることもあるので注意が必要です。予後はベル麻痺よりやや不良であり、早期からの治療が重要になります。
  • ギランバレー症候群
    先行感染などの刺激で誘発された自己免疫機序によるものと考えられており、急性の末梢神経障害です。多くは呼吸器もしくは消火器系で風邪や下痢などの症状があった後に、手足の筋力低下によって足が動きにくくなるなどの運動麻痺が起こります。約半数の人で両側の顔面神経麻痺を認め、目が動かなかったり、話づらいなどの症状が出ることがあります。

糖尿病による場合

糖尿病による単一性神経障害でも顔面神経麻痺はおこります。神経を養っている細い血管が血栓で詰まって神経に血液がまわらなくなり、その部分にだけでてくる障害です。血糖のコントロールが重要になります。

顔面神経麻痺の症状

顔面神経麻痺によってでてくる症状です。

  1. 左右の表情が対称でなくなる
  2. 額のしわ寄せができない
  3. 眼をしっかりつぶることができない
  4. 鼻唇溝があさい
  5. 口角が下がる
  6. 口笛がうまく吹けない
  7. 聴覚過敏 :人の声が大きく聞こえ、響きすぎる
  8. 味覚障害 :舌の前方2/3で味覚の低下が起こる
  9. 涙分泌障害:涙分泌が低下する

顔面神経の完全麻痺期及び回復期における注意点

Ⅰ低周波(電気鍼)を避ける

低周波(電気)は麻痺側の筋肉を収縮させることによって、回復期では顔面神経核の興奮性が亢進しているために共同運動が出現しやすくなり、顔面拘縮の誘因になることもあります。長い間の鍼灸臨床経験と低周波刺激は禁忌という専門家の意見に基づいて、当院は回復期の顔面麻痺に低周波を使っていません。

Ⅱ顔面神経麻痺のマッサージについて

マッサージは麻痺した顔面筋肉の走行に沿って気持ちのよい強さでけっこうです。または蒸しタオルを使うと、顔面のこわばりに対して効果があります。マッサージ前に使って顔面筋のストレッチングを促します。

Ⅲ粗大筋力訓練は避ける

顔面神経麻痺になって麻痺側の筋力(表情筋)が低下したからと言って、荒っぽく強すぎる筋力訓練をすると中枢レベルの共同運動(後遺症)を誘導しやすなくなります。時間の経過とともに麻痺した筋肉の緊張は亢進し、顔面痙攣や顔面拘縮の誘因になります。

Ⅳ長時間に冷たい風を避ける

冷たい風やアイスを長時間顔面や耳の後ろ(顔面神経の出口)のあたりに当てると顔面神経麻痺になるかたもいます。顔面麻痺の側に冷たい風やアイスは避けたほうがいいです。特に回復期は要注意です。

Ⅴ顔面神経麻痺を治そうという気持ち

顔面神経麻痺になった原因はまだはっきりしないことが多いですが、超多忙の生活やストレスなどによって睡眠時間が極端に少なくなったり、また免疫力や体力が低下したことで麻痺になることも結構あります。できれば規則正しい習慣を身に付けて、自己健康管理をしっかりしましょう。免疫力や体力を高めて、治そうという気持ちを強くもち、常に前向き姿勢で臨むことによって、自然治癒力が高まり、麻痺の回復につながります。

『顔面神経麻痺の鍼灸治療』のながれ

問診

安静時の非対称の程度や額のしわ寄せ、眼を閉じる動き等をひとつひとつ記録しこの時鏡を使用し、患者様自身にも何がどの程度出来て、何が出来ないのかを把握してもらいます。問診が終わるとベッドに仰向けになってもらい、顔面、手、足のツボに鍼を打っていきます。服装は肘、膝が出れば結構です。当院で着替も準備しておりますのでお気軽にお申し付けください。鍼が打ち終わると、状況に合わせて打った鍼に電気を流したり、お灸で温めたりします。 治療が終わり、鍼を抜いた後には、家庭での訓練なども指導していきますので、よりいっそうの効果が期待できます。

~顔面神経麻痺の発症時期と治療法~

[発症1週間~1ヶ月]

  • 鍼灸治療をメインに行う
  • 発症直後から鍼灸治療が可能
  • 初回治療から3日は続けて治療することが望ましい
  • 4回目以降は2日おきの来院で2週間くらいを1クールとして継続が望ましい
  • お灸は末梢神経の回復、ウイルスの除去に有効なため、発症直後10日以内の筋肉・神経へは局部の鍼灸治療が大変効果的

[発症1ヶ月~6ヶ月]

  • 発症後1ヶ月くらいの場合、3ヶ月間は週2回治療を継続することが望ましい
  • 自覚症状の改善度、回復度合いに応じて3ヶ月目以降は週1回治療で継続が望ましい

[発症6ヶ月~1年]

  • 3ヶ月間は月2回治療で経過を診る
  • 治療しないまま発症から1年経過したものは後遺症になるため、治療期間が長期になるケースが多く見られる