顔面神経麻痺

顔面神経麻痺はWHO(世界保健機構)の鍼灸適応疾患の一つに挙げられており、鍼灸臨床においては回復が得られる疾患として認識されています。治療に関しては、急性期ではまず専門医療機関におけるステロイドなどの薬物療法で神経の炎症と腫れを引かせ、それと併せて週に1~2回の鍼灸治療をしていきます。顔面への鍼灸治療により顔面神経やその周辺組織の血流改善・壊れた組織の修復を目指し、手足への治療を合わせる事で全身の血液循環の改善、回復力・免疫力の向上を図っていきます。

顔面神経の完全麻痺期及び回復期における注意点

Ⅰ低周波(電気鍼)を避ける

低周波(電気)は麻痺側の筋肉を収縮させることによって、回復期では顔面神経核の興奮性が亢進しているために共同運動が出現しやすくなり、顔面拘縮の誘因になることもあります。長い間の鍼灸臨床経験と低周波刺激は禁忌という専門家の意見に基づいて、当院は回復期の顔面麻痺に低周波を使っていません。

Ⅱ顔面神経麻痺のマッサージについて

マッサージは麻痺した顔面筋肉の走行に沿って気持ちのよい強さでけっこうです。または蒸しタオルを使うと、顔面のこわばりに対して効果があります。マッサージ前に使って顔面筋のストレッチングを促します。

Ⅲ粗大筋力訓練は避ける

顔面神経麻痺になって麻痺側の筋力(表情筋)が低下したからと言って、荒っぽく強すぎる筋力訓練をすると中枢レベルの共同運動(後遺症)を誘導しやすなくなります。時間の経過とともに麻痺した筋肉の緊張は亢進し、顔面痙攣や顔面拘縮の誘因になります。

Ⅳ長時間に冷たい風を避ける

冷たい風やアイスを長時間顔面や耳の後ろ(顔面神経の出口)のあたりに当てると顔面神経麻痺になるかたもいます。顔面麻痺の側に冷たい風やアイスは避けたほうがいいです。特に回復期は要注意です。

Ⅴ顔面神経麻痺を治そうという気持ち

顔面神経麻痺になった原因はまだはっきりしないことが多いですが、超多忙の生活やストレスなどによって睡眠時間が極端に少なくなったり、また免疫力や体力が低下したことで麻痺になることも結構あります。できれば規則正しい習慣を身に付けて、自己健康管理をしっかりしましょう。免疫力や体力を高めて、治そうという気持ちを強くもち、常に前向き姿勢で臨むことによって、自然治癒力が高まり、麻痺の回復につながります。

『顔面神経麻痺の鍼灸治療』のながれ

問診

安静時の非対称の程度や額のしわ寄せ、眼を閉じる動き等をひとつひとつ記録しこの時鏡を使用し、患者様自身にも何がどの程度出来て、何が出来ないのかを把握してもらいます。問診が終わるとベッドに仰向けになってもらい、顔面、手、足のツボに鍼を打っていきます。服装は肘、膝が出れば結構です。当院で着替も準備しておりますのでお気軽にお申し付けください。鍼が打ち終わると、状況に合わせて打った鍼に電気を流したり、お灸で温めたりします。 治療が終わり、鍼を抜いた後には、家庭での訓練なども指導していきますので、よりいっそうの効果が期待できます。

治療頻度の目安

発症から半年間は週に1~2回、6ヵ月~1年は1~2週間に1回を目安に治療を進めていきます。ベル麻痺は1ヵ月以内に治るケースが多いです。また、正常範囲まで回復した場合や全く変化のない場合は治療終了とします。まれに内出血や刺鍼時の痛みを伴うことがありますが、表情が良くなったり、顔の動きがスムーズになるといった実感を得られると思います。

最初に問診の時間をいただき、患者さんの理解と同意の上で治療にあたっていきますので安心してご相談ください。鍼治療とあわせた顔面部のマッサージも非常に効果的です。