頭痛

頭痛の原因は様々ですが、特に明確な病気があるわけではないのに繰り返し起こる頭痛は、一次性頭痛と呼ばれ、首や頭部周辺の筋肉の緊張や、血管の拡張などによって起こると考えられています。この頭痛に対して、日本頭痛学会では、治療のガイドラインとして、鍼灸治療をあげています。特に、片頭痛に対しては非薬物療法として鍼灸治療の推奨度をAに位置づけています。もともと、一時性頭痛の原因である筋肉や血管の状態は鍼灸治療が最も適した治療法であり、近年の自律神経が乱れやすい、また女性ホルモンのバランスが乱れやすい生活環境を考えると、鍼灸治療を第一選択とし、治療だけでなく、再発防止のための予防治療にも活用していくことが望ましいです。

頭痛の原因は様々ですが、特に明確な病気があるわけではないのに繰り返し起こる頭痛(=一次性頭痛)と、病気が原因であらわれる頭痛(=二次性頭痛)に大別できます。 代表的な一次性頭痛は、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の3つです。 緊張型頭痛と片頭痛は、混在する人もいます。

頭痛全般的に最も多いのが一時性頭痛に分類される緊張型頭痛です。年齢や性別を問わず、誰もが発症する可能性のある頭痛と言えます。精神的なストレスや長時間のデスクワーク、スマホの使い過ぎなど同じ姿勢を続けることによって、血行が悪くなり首や頭の筋肉が緊張してしまうことで頭痛が起こります。緊張型頭痛に関係する筋肉は、首や頭から肩、背中にかけて走行しているため、肩や首のこりを伴う人が多いです。後頭部を中心に頭全体が締め付けられるような重苦しい痛みです。範囲が広くなると、目も開けられなくなるまで痛みます。

片頭痛は、20代から40代の女性に特に多くみられ、緊張型頭痛の次に多い頭痛です。 片頭痛の原因は、頭蓋骨内の血管が広がり炎症を起こしたためと考えられています。 ストレスや疲労の他、女性に多いことから、女性ホルモンが何らかの形で関わっていると見られています。 片頭痛の症状は、ズキズキと脈打つような強い痛みで、光や音に敏感になったり吐き気などを伴います。 また、頭や体を動かすと、頭痛を誘発する傾向があります。 頭痛の前兆として、チカチカとした光が見えることもあります。一般的な頭痛薬が全く効かない場合は片頭痛の可能性が高いとも言えます。

筋肉が収縮することでおこる緊張型頭痛と、血管が拡張することでおこる片頭痛が混在するケースです。 

どちらの症状が強いのか、また頻繁におこるのか確認しながら適切な治療が必要になります。

群発性頭痛を発症する患者さんは比較的少ない傾向にありますが、どちらかというと男性に多くあらわれます。 

群発性頭痛の原因は、目の後ろを通っている内頚動脈が拡張して炎症が起きるためではないかと考えられています。 この炎症が起きる原因はわかっていませんが、体内時計が関係しているとも言われています。 群発性頭痛の症状は、原因となる内頚動脈が目のところにも分布しているため、「目をえぐられるような」激しい痛みで、 一度、症状が出始めると、1~2カ月間、毎日のように同じ時間に頭痛が表れるようになります。

二次性頭痛の原因は、クモ膜下出血や脳腫瘍など、重篤かつ、緊急の処置を必要とするケースが多いため、早期の診断と対処が必要です。 経験したことのない強い頭痛が突然表れたり、手足の麻痺やしびれ・痙攣や、激しい嘔吐、高熱などを伴う頭痛が起きた時はすぐに救急車を呼ぶなどしなければなりません。 また、帯状疱疹など、ウイルス感染による頭痛の場合も注意が必要となります。

頭痛は、鍼治療の中で最も適正が高い疾患の一つです。現代医学的な鍼治療によって頭痛の症状が改善する機序は、大きく二つあります。それは、「血管の圧迫の解除」と「後頭神経の圧迫の解除」です。頭痛は、肩こり、首こりや頭の筋肉のこりからくるものが多く、筋肉が硬くなると頭へ向けて走行している血管や神経をいじめてしまうのです。それぞれ説明していきます。

首の筋肉の硬さが、頭部へ向けて走行している首の血管を圧迫すると起こるのが「筋緊張性頭痛(緊張型頭痛)」です。筋肉の緊張による頭痛はさらに悪化すると、どくどくと脈を打つ拍動性の片頭痛になってしまうこともあります。片頭痛は、緊張から解放されて副交感神経が優位になると、血流が良くなって、圧迫されている血管に無理やり血液が流れ込むことで症状が出ます。平日に仕事で忙しく過ごして交感神経が優位の状態から、週末に入りリラックスして副交感神経が優位になると症状が出やすいことから「週末性頭痛」とも呼ばれます。血管の圧迫が原因で起きる頭痛には、血管を圧迫している首の筋肉の硬さを鍼で優しく緩めていく治療が主体となります。首には細かい筋肉が複雑に走行していて、圧迫の原因となっている硬い筋への局所的な治療に、鍼はとても有用です。

頭の付け根にあり、頭の重さを支えている後頭下筋群の一つである「下頭斜筋」という筋肉は、硬くなると大後頭神経や小後頭神経を圧迫して頭痛を引き起こします。このような頭痛は「後頭神経痛」とも言われます。下頭斜筋などの筋肉は体表から深い位置にあるので、鍼治療でないと適切な刺激が入りません。このエリアへの鍼治療は、効果が高いだけでなく、治療を受けている患者様にとっても、鍼の刺激が心地良いポイントです。