腎臓の食事について

腎臓の数値が悪かった。といっても、どんな食事に変えればいいのか?わからない方も多いのではないでしょうか。実は、腎臓は食事の影響を特に受けやすい臓器です。食事は毎日とるものなのでちょっとした工夫をして頂くことで、腎臓が疲弊して衰えるのか、長く働いてくれるのかが変わってきます。

  • 塩分・糖質・脂質・アルコール

まずはこの4つを気を付けてみてください。

塩分を摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が高まり、カラダがそれを薄めようとして血管の中に水分を取り込んで、血液量が増加し血管にかかる圧力が高まり、高血圧となります。高血圧になると腎臓の中にある糸球体に圧がかかり、腎機能が低下します。

このようなことはないですか?

  • ハムなどの食肉加工品やかまぼこなどの魚肉加工品をよく食べる。
  • 毎食みそ汁やスープを飲む
  • 外食が多い
  • 濃い味付けが好き

食肉加工品や魚肉加工品には塩分が多く含まれています。
また、汁物には塩分が多く含まれているので一日一食くらいがおすすめです。
ラーメンやうどんのスープは残すようにするだけで、塩分摂取量をカットできます。

血糖値が高く、高血糖状態が長期間続くと、糸球体が障害を受けます。
その結果、腎臓のろ過機能が低下し、タンパク尿が出るようになります。

このようなことはないですか?

  • 食事の際に、ごはんと漬物だけ
  • 朝食は食べない
  • ジュースなど甘い飲み物をよく飲む
  • 昼食は麺類、おにぎり、パンのみですますことが多い
  • 野菜、果物、キノコ、海藻類はあまり食べない

食事の際にごはんや、パンといった炭水化物のみではなく、食物繊維を含む野菜などを一緒に摂ることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。また、朝食を食べずに昼食をたべると、血糖値は急上昇するので、朝食は少しでも何か食べることがおすすめです。

血中に含まれる脂質が多い状態を「脂質異常症」といいます。
脂質異常症を発症すると、動脈硬化が進行して腎臓を障害し、慢性腎臓病などの腎臓病を引き起こします。

このようなことはないですか?

  • 揚げ物や炒め物などをよく食べる
  • TVをみながらごはんを食べることが多い
  • 食欲を我慢できず、つい食べ過ぎてしまう
  • 深夜に夕食や夜食をとることが多い

同じ食材でも、どう調理するかで、一緒に摂る油の量が変わってきます。なるべく、茹でたり蒸したものがおすすめです。食事に意識が向いていないと、満腹感が得られにくいといわれています。TVやスマホの視聴は食事時間と分けるのがおすすめです。夜は脂肪が蓄積しやすいので、可能な際は、少しでも早い夕食をとりましょう。

腎臓の機能が低下することで、尿酸がカラダから出にくくなり、高尿酸血症を起こします。
その一方で、高尿酸血症があることで腎臓の機能も低下させてしまうことがあるので、アルコールは飲み過ぎないようにしましょう。アルコールをやめられないという方もゼロにするのではなく、まずは適量を意識してみましょう!アルコール飲料はプリン体の有無に関わらず、アルコール自体の分解の際に尿酸を産生します。
また、酸性尿も助長するため、尿中尿酸排泄を阻害する働きがあります。
このため、プリン体を含まない焼酎やウイスキーなどの蒸留酒であっても、摂取量の増加に伴って尿酸値が上昇します。お酒の適量は純アルコール20gとされています。

◎アルコール量の計算方法
お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8(アルコールの比重)=純アルコール量(g)
例えば、アルコール度数25%焼酎100mlに含まれる純アルコール量は

100ml × 25/100(=25%) × 0.8 = 20gとなります。
具体的には

  • ビール(5%)500ml 1本
  • 焼酎(25度)グラス1/2杯(100ml)
  • チューハイ(7%)350ml 1本
  • ウイスキー ダブル1杯(60ml)
  • ワイン グラス2杯弱(200ml)
  • 日本酒 1合(180ml)

が適量になります。

腎機能が低下している方に気を付けて頂きたい食品があります。それは、ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工食品、インスタント食品、スナック菓子です。なぜかというと、塩分が多く、食品添加物のリン酸塩を加えられている場合が多いからです。食品添加物のリンは天然のリンよりも吸収されやすく、過剰に摂取しやすくなります。肉・魚などタンパク質が多い食材に含まれる天然のリンの吸収率が20%~60%であるのに対して食品添加物のリンの吸収率は90%以上となります。本来であれば、腎臓は過剰なリンをろ過し排出しますが、腎機能が低下すると十分に排出されにくくなります。その結果「高リン血症」となり骨がもろくなったり、脳卒中や心筋梗塞を招いたりして、腎臓の石灰化をまねき腎機能が更に低下してしまう可能性があります。
添加物のリンは、ハムなどの他に、魚肉ソーセージなどの食肉・魚肉加工品、プロセスチーズなどにも、多く含まれています。プロセスチーズの表示でリン酸塩を「乳化剤」と記載されることがあります。
魚肉加工品では原材料の「魚肉」(すり身)の製造にリン酸塩を使用していても「加工助剤」とみなされるため、完成した製品には表示義務がありません。このように、リンの添加に気が付かないこともあります。リンはカルシウムと共に骨をつくるほか、神経や筋肉の働きを調整するなど、健康や生命を維持するために重要なミネラルです。しかし、食品添加物としてリン酸塩が多用されていたり、現代ではリンの欠乏よりも過剰摂取が問題となっています。

→「リン」「リン〇〇」と書かれていなくても、「ph調整剤」「かんすい」「結着剤」「酸味料」「香料」「膨張剤」の表示があるものは避けましょう。

→ちくわやかまぼこなどの練り物は下ゆでしてから使用する。
→ソーセージやハムなどを炒めものにする際も、一度湯通ししたものを使用する。

→麺を一度ゆで、ゆで汁を捨ててから新しい湯でスープをつくる。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日のリンの目安量を18歳以上の男性で1,000mg、女性800mgとしています。
耐容上限量は18歳以上男女ともに3,000mgと設定されています。
リンの摂取制限が必要とされるのは、慢性腎臓病のステージG5で高リン血症の患者さんや、人工透析を導入した患者さんです。
しかし、G1~G4の人も早くからリンの過剰摂取には注意していきましょう。

◆麺の種類による塩分量

麺類の中でも麺の種類によって、塩分量が違っていたり、茹でることでも塩分量が異なります。

うどん

乾麺のうどん83g【塩分量3.6g】 茹でると約200g(2.4倍)になり【塩分量1.0g】
生麺のうどん154g【塩分量3.9g】 茹でると約200g(1.8倍)になり【塩分量0.6g】

そば

乾麺のそば77g【塩分量1.7g】 茹でると約200g(2.6倍)になり【塩分量0.2g】
生麺のそば105g【塩分量0g】 茹でると約200g(1.9倍)になり【塩分量0g】

そうめん

手延べそうめん69g【塩分量4g】 茹でると約200g(2.9倍)になり【塩分量0.6g】
ごらんの通り、茹でることで減少します。
最近ではゆでうどんでも食塩ゼロうどんなども販売されているので、スーパー等でさがしてみてくださいね。

麺類のスープを残す

麺類のスープには6g程度の塩分が入っています。
1日の塩分摂取量(食塩摂取量)の基準は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。
スープを全部飲み干すと1日量に相当する塩分6gを摂ってしまいます。
→めんと具だけを食べると、2.3g(可食率47%)
→めんと具だけを食べスープを半分残す、3.2g(可食率64%)
というように減塩できます。まずは、スープを半分残すことから始めてみましょう。

  • 腎機能が低下すると余分なリンを十分に排泄できなくなり、血液中のリン濃度が高まる「高リン血症」になるリスクがあるからです。
  • 腎機能が低下すると血液中のカルシウム濃度が濃くなるにも関わらず、リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害します。つまり、骨がもろくなったり、骨粗鬆症のリスクがあがります。

そんなリン酸塩を減らす工夫を今日はご紹介!!

① 主食はパンよりごはんにする!
→添加物も塩分もないごはんにすることで、摂取せずにすみます。

② なるべく、裏の表示を確認する!乳化剤、ph調整剤、酸味料とかいてあるものは避ける!
→どうしても摂る時は、頻度を減らしましょう。

③ ハム、ソーセージ、ちくわ、かまぼこなどの練り物は小さく切り、一度茹でてから使用する!
→リンは水に溶ける性質があるので、摂取量を減らすことができます。

④ カップ麺にいれたお湯を捨てたり、インスタントラーメンのゆで汁を一度捨て、スープは別の容器でつくる!
→リンは水に溶ける性質があり、摂取量を減らせます。また、麺の塩分も削減できます。

⑤ 清涼飲料水を控える、頻度を減らす!
→清涼飲料水は砂糖だけでなく無機リンを使用しているものが多いです。コーラには特に多く含まれています。

海藻サラダ

  • サラダを選ぶときに、海藻サラダを選び、豆腐も別で購入し、豆腐海藻サラダにする。
  • 豆腐とキムチ、納豆とキムチを買い購入した冷やしそばや、うどんにトッピングする。
  • レトルトカレーに冷凍ブロッコリーを加える。
  • 海藻サラダや冷凍野菜を味噌汁に加える。
    ①マグカップに味噌小さじ1、鰹節1/3パック、お湯120mlを入れて溶く。
    ②海藻サラダや冷凍野菜を適量レンジで温め①に加える。
  • おかず(砂ぎも、レバニラなど冷凍食品可)にもやしを足す。
    ①お皿にもやし1袋を広げ、砂肝などのおかずをのせ、レンジで温める。

夜遅い食事はあまりお勧めできませんが、そうはいっても仕事や家事に追われていると食べるタイミングを逃してしまうこともあるかと思います。
そんな時は、

  • 消化時間の短い食べ物
  • 温かいもの
  • 脂っこくないものがおすすめです。

消化時間の短い食べものとは、胃の停滞時間が短い物になります。表を参考にしてみてくださいね。

停滞時間 食品(100g)
2時間以内 食パン、麦飯、お粥、半熟卵、かぶ、生野菜、りんご、バナナ
2.5時間以内 ご飯、そば、餅、じゃが芋、人参、生卵、牛乳
3時間以内 うどん、味噌汁、かぼちゃ、卵焼き、さつま芋、煮魚
3.5時間以内 焼き魚、ゆで卵、貝類、牛肉、かまぼこ、えび
4-5時間 豚肉、ベーコン、ロースハム、天ぷら、うなぎ、かずのこ
12時間 バター(50g)

腎臓病の食事療法では、野菜を控えるべきかどうか悩む方も多いかもしれません。
特に、慢性腎臓病のステージが進行すると、カリウムの摂取を制限する必要が出てきます。
たとえば、ステージG3b以降では1日2000mg、ステージG4以降では1500mg以下に抑えるよう指導されることが一般的です。一方で、野菜にはカリウムだけでなく、ビタミンやミネラルといった健康に役立つ栄養素が豊富に含まれています。そのため、カリウム制限が必要な場合でも、完全に野菜を避けるのではなく、適切な摂取量を守りながら取り入れることが推奨されるケースもあります。実際のところ、食事でどの程度野菜を摂取するべきかは、腎臓病のステージによって異なります。

  • ステージG3までの方は、栄養バランスを考慮し、積極的に野菜を摂ることが勧められます。
  • ステージG3b以降の方も、摂取量に注意しながら、可能な範囲で野菜を取り入れるとよいでしょう。

自分の状態に合った食事療法を専門家と相談しながら進めることが大切です。

野菜をおすすめする理由は野菜には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれているからです。
野菜に含まれるビタミンの中でも、カロテンやビタミンCなどには抗酸化作用があり、腎臓を傷める過剰な活性酵素の害を弱めてくれます。
野菜には色が濃くβカロテンの含有量が多い緑黄色野菜と淡い色で食物繊維の豊富な淡色野菜があります。
緑黄色野菜にはオクラ、カボチャ、小松菜、にら、大根の葉、しそなどがあります。
淡色野菜には大根、白菜、なす、きゅうり、とうもろこしなどがあります。
緑黄色野菜1に対して、淡色野菜2の割合で摂取することが望ましいとされています。
また野菜に含まれるミネラルのひとつであるカリウムは、摂り過ぎた塩分を体外へ排出する手助けをしてくれ、腎臓にとって負担となる血圧を下げてくれます。
その一方で「腎臓病はカリウム制限がある」といった認識をされている方は多いかと思います。
腎機能が低下すると、カリウムが尿で排泄されなくなり、カラダに溜まってしまうからです。
ただし、カリウム制限が必要となるのは、人工透析になる直前であり、腎臓学会が発行するガイドラインでは軽症である慢性腎臓病ステージG3aまでの方にはカリウム制限は推奨されていません。
そのため、慢性腎臓病ステージG3b以上でカリウム制限が必要な場合の食事は主治医とよく相談してください。

  1. 加熱調理をする。(煮る、茹でる、蒸す、炒めるなどしてカサを減らす)
  2. みそ汁やスープ、鍋ものにたっぷりの野菜を入れる。
  3. 肉や魚を単品で調理せず、野菜を必ずプラスする。(生姜焼きのソースに玉ねぎ、焼き魚に大根おろしなど。)
  4. 朝食で野菜を食べる。(昼と夜だけで350g摂るのは難しいので、前日に用意しておいたり、冷凍野菜などを準備しておくこともおすすめです。)
  5. 外食した際に野菜を多く摂れるメニューを選ぶ。(トッピングメニューで追加したり、お弁当にサラダやお惣菜をプラスする。)