仙腸関節炎とは
仙腸関節とは、骨盤にある腸骨と尾底骨の上の仙骨との間にある関節です。仙腸関節は体と脚をつなぐための重要な関節で、周囲にある強度の高い靭帯と連結して安定しているため可動範囲が狭く、わずか3~5mmしか動きません。そのわずかな動きで、上半身にかかる重さや下半身にかかる地面からの衝撃などを吸収する役割を持っています。この仙腸関節に大きな負担がかかって起こる炎症が、仙腸関節炎です。発症する年代はさまざまで、老若男女を問わず腰痛の原因となる症状です。

仙腸関節炎の症状
仙腸関節炎は仙腸関節の片側または両側に炎症が起き、仙腸関節周辺に痛みが生じることから、腰やお尻に痛みやしびれ、だるさなどの症状が現れます。足の付け根部分や太ももなど、下肢に痛みが出る場合もあります。左右どちらかに症状が現れることが多く、痛みを感じる箇所を自分で指し示せる点も、仙腸関節炎の大きな特徴です。痛みによって長時間座ったままや立ちっぱなしが辛くなることや、仰向けになること、痛みのある方を下にして眠れなくなること、動き始めに痛みを感じることも、仙腸関節炎の症状です。日常生活で何気なく行っている動作でも、痛みによって困難になることがあります。
原因・こんな人がなりやすい!
- 関節リウマチや強直性脊椎炎などの慢性関節炎を持つ人
これらの病気は仙腸関節の炎症を引き起こすことがあります。 - 妊娠中または産後の女性
妊娠中のホルモン変化や出産時の骨盤の変化によって、仙腸関節に負担がかかりやすくなります。 - 外傷歴がある人
交通事故や転倒などによって骨盤や腰に外傷を受けた場合、仙腸関節に問題が生じることがあります。 - スポーツ選手
特に高強度のスポーツや体をひねる動作が多いスポーツを行う人は、仙腸関節に負担がかかることが多くなります。 - 長時間座りっぱなしの人
デスクワークや長時間の運転などで長時間座っていると、仙腸関節にストレスがかかることがあります。 - 姿勢が悪い人
姿勢が悪いと、仙腸関節に不均等な負荷がかかりやすくなります。
これらの要因により、仙腸関節炎のリスクが高まることがあります。症状がある場合は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。
仙腸関節炎はどのように診断される?
仙腸関節炎はレントゲンやCT、MRIでは骨盤に異常がみられないため、診断が困難です。そのため単なる腰痛や他の疾患と診断され、見逃されることが多い症状です。似たような症状が出る腰椎椎間板ヘルニアではないことを画像診断で確認し、異常がなかった場合は、どのような症状が出ているか、何をすると痛みが出るかを問診で確認した上で、仙腸関節を圧迫する触診が行われます。
先述の通り仙腸関節炎は、患者自身で痛みが出ている部位を指で示せるのが特徴です。そのため指をさしてもらうワンフィンガーテストでも診断を行います。圧迫することで強い痛みが出る場合は、仙腸関節炎の診断につながります。
仙腸関節炎の人がやってはいけないこと
長時間の同じ姿勢や座り方
長時間同じ姿勢でいることや、座ったままの姿勢を維持することは、仙腸関節に余分な圧力をかけます。適度な休憩や姿勢の変更を行い、関節に負担をかけないようにしましょう。
不適切な姿勢や体の使い方
正しい姿勢や身体の使い方に気をつけることも重要です。例えば、重い物を持ち上げる際には腰を曲げずに膝を使って行うなど、関節に負担をかけないような動作を心がけましょう。
過度な運動や負荷のかかる活動
仙腸関節に負担をかけるような過度な運動やスポーツは避けましょう。特に、ジャンプや回転動作を伴うスポーツや運動は、症状を悪化させる可能性があります。
自己判断での治療や運動療法
仙腸関節炎の治療や運動療法については、専門家の指導を受けることが重要です。自己判断での治療や運動は、逆に症状を悪化させる可能性があります。
病院やよくある整骨院での仙腸関節炎の対処や施術
仙腸関節炎は、レントゲンやMRIでは原因がわからず、ブロック注射で痛みを抑えることがほとんどです。
また、骨盤矯正ベルトやコルセットで腰を固定して痛みを和らげることもありますが、仙腸関節の治療を行っているわけでないので、症状が残ってしまうのが現実です。仙腸関節炎を根本から改善するには、体幹の強化や身体の正しい使い方、生活習慣の見直しが重要になります。
仙腸関節炎の治療方法
仙腸関節炎の治療には、まず安静が基本です。加えて、筋弛緩薬や抗炎症薬、痛み止めの内服、骨盤ベルトまたはコルセット着用などの保存療法を行います。
これらの方法で改善が見られなかった場合は、仙腸関節に局所麻酔を注射する仙腸関節ブロックが行われることがあります。仙腸関節ブロックは、痛みが緩和されるとともに仙腸関節の適合の改善が期待される、仙腸関節炎の治療に有効な方法です。また電気を流す鍼治療やステロイド注射を行うこともあります。
運動療法としては、仙腸関節やその周囲の関節のストレッチやエクササイズがあり、自分で取り組める方法もあります。テニスボールなどを使ったお尻の筋肉をマッサージする方法や、仰向けになった状態で息を吐きながらお腹を引っ込めて腹横筋というお腹の筋肉を鍛えるドローイン、ドローインしたままお尻を持ち上げる大殿筋のエクササイズは、仙腸関節炎の痛み軽減効果が期待できるでしょう。
その他にも、骨盤矯正やインナーマッスル強化なども、仙腸関節炎の治療方法の一つです。近年では痛みが出ている部分に発生した、微細な新生血管に直接アプローチするカテーテル治療も、仙腸関節炎治療に用いられています。